質量分析、メタボロミクス、データ解析

PESIでは探針を用いて組織から直接生体成分をピックアップしますが、
これに電圧を印加しただけでは、なかなか安定してイオン化してくれません。
そこで組織表面に溶媒を滴下したり、カップを組織表面に置いて溶媒溜まりを作ったりします。


しかしこれらの方法では、
溶媒によって周辺の領域から成分が溶出され、空間分解能、時間分解能が失われてしまう、
組織表面が溶媒によって侵襲される、などの問題が生じます。
そこで組織表面には溶媒を滴下せず、探針先端に溶媒を供給するスプレーシステムを
山梨大学工学部電気電子工学科 Chen先生のご協力下で構築しました。


図右側のスプレーヤーを用いれば、任意の溶媒を、任意の強さでスプレーすることが可能です。
探針の先端と、イオン吸い込み孔、スプレーヤーは並列に配置されています。
これによって組織表面に溶媒を接触させることなく、
探針先端が触れた部分のみから正確に生体成分をピックアップすることが可能です。
また探針先端に付着した成分を吹き飛ばす作用もあるため、経時的な分析の際には
キャリーオーバーを回避することにも役立ちます。

実験目的によってはむしろ後者のメリットの方が重要ですが、
これについては別の項で説明したいと思います(準備中)。

スプレーされた溶媒の様子

安定してイオン化するには、各パーツのアライメントや、溶媒量、ガス流量を
かなり厳密に制御する必要があります。
スプレーヤーの条件検討と、リアルタイムMSにおける有用性に関しては近日論文で報告します。

スプレーヤーを組み込んだシステム全体の外観


探針で接触した部分以外からの、溶媒による生体成分の持ち込みは回避できましたが、
組織から直接メタボロームを検出するには大きな課題があります。
それは検出された成分がどの組織に由来するのかを、厳密に区別することが難しいということです。
肝臓を例に見ても探針が採取する可能性がある生体成分は、漿液、漿膜、血液、肝臓組織など複数から由来します。
肝臓の組織中にはさらに複数の細胞種が存在し、また肝動脈、中心静脈どちらの周辺かによって
肝細胞中の代謝産物の存在量が大きく異なります。
これらの区別をどのように行うかを今後検討していきたいと思います。

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