質量分析、メタボロミクス、データ解析

本質量分析装置では山梨大学で独自開発されたイオン化法である、
探針エレクトロスプレーイオン化法 (Probe Electrospray Ionization, PESI) を用いています。
(Hiraoka et al., Rapid Commun Mass Spectrom, 2007)

PESIは生物試料の質量分析に非常に適したイオン化法であり、
この技術によって医学、生物学研究への応用範囲が拡大しました。

PESIを搭載した質量分析装置(PESI-MS)は、所属研究室と島津製作所の共同研究により
(代表:教室主任の竹田 扇教授)肝細胞がんの術中診断支援装置としてシステム化されました。
また当該装置の医療機器としての承認を得るために、現在治験に向けた準備段階に入っています。
(Takeda et al., Journal of Analytical Oncology, 2012)

装置外観



吉村はこれまで当該装置の開発に携わってきましたが、独自の研究としてはこの装置を医学、生物学の分野で
広く用いることが可能な新たなシステムに改良することを目指します。
この新たなシステムではデータの管理を簡便にし、高度な解析を行うことができる
プログラムを組み込むことも目指します。


本システムの要である、イオン化法のPESIについて説明します。
PESIはelectorospray ionization (ESI) を改変した方法ですが、それに関してはここでは省略します。
PESIでは金属製の探針をアクチュエーターで上下駆動させ、検体の採取とイオン化を周期的に繰り返します。


探針にはステンレス製の鍼灸針を加工して用います。



PESIには以下のような他のイオン化法にはない特徴が備わっています。
大気圧下で測定が可能
試料量が非常に微量でよい (数ピコリットル)
極めて低侵襲である
試料の前処理が不要
ランニングコストがかからない
塩や界面活性剤の影響を受けにくい
ESIでは検出が困難な生体分子も検出できる場合がある (中性脂肪など)
リアルタイム動態解析が可能

生体試料のPESI-MSの様子です。
摘出された検体の場合にはサンプルプレートに挟み込むだけですぐに分析が開始できます。

本システムは固体、液体を問わず、ほとんどの生物試料を前処理なく質量分析することが可能です。
特別な目的がある場合には前処理を加えることも可能です。
生きたままの動物を質量分析する際には上記システムに改変が必要です。

当該システムを用いてこれまでに、
脂肪肝の判別 (Yoshimura et al., Anal Biochem, 2011)
腎細胞がんの判別 (Yoshimura et al., J Am Soc Mass Spectrom, 2012)
肝細胞がんの判別 (Yoshimura et al., Anal Biochem, 2013)
生きたマウスのメタボローム解析、薬剤動態解析 (Yoshimura et al., Mass Spectrom, 2014)
を行ってきました。
現在更なる応用拡大に向けて、研究開発を進めています。

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